
写真家・石川幸史さんの金沢では初の個展「汀(みぎわ)の光、時の轍(わだち) 能登」が10月3日から、Gallery Caring(ギャラリー・ケアリング、金沢市石引4)で開催されている。
石川さんは2018(平成30)年、東京都から石川県へ移住。冬の雷や大雪、湿度の高さや曇天の多さ、頻繁に虹が発生するなど、太平洋側とは異なる日本海側の気候に驚いたという。地、水、風、火といった自然のエレメント(要素)をテーマに作品を制作する石川さんは「気候の違いを生み出す日本海に引かれ、2023年ごろから能登や加賀の海岸沿いを歩いて撮影するようになった」と振り返る。
2024年1月に発生した能登半島地震後も、石川さんは輪島市や珠洲市、穴水町や能登町の九十九湾などを訪れ、被災した海岸沿いや町の風景を記録し続けている。同展では海岸が地震によって隆起する前後の風景や、津波被害を受けた家や港、能登町宇出津の「あばれ祭り」や能登島の「向田の火祭」でたかれるたいまつの火、祭りに参加する人々の熱気などを写真で伝える。
石川さんは、海面から能登の姿を捉えたシリーズについて「地震で海岸線が変わり、地元の人からは『海が小さくなったように思う』という声を聞いた。海の中には土砂崩れや地盤沈下で道路やガードレールが沈んでいるが、小さな魚やクラゲなどの生き物と共存している。人の力ではコントロールができない海に浮かびながら撮影することで、地平との境界や揺らぎを表現した」と説明する。今後の活動については「震災前後、そして今も変化し続ける能登の姿は、その瞬間にしか見られない。移ろいゆく能登の痕跡を5年、10年と時間をかけて記録し、未来に残すことが自分の写真家としての仕事だと感じている」と話す。
開館時間は11時~19時。入場無料。今月13日まで。