
古民家をスピーカー代わりに振動させて音を鳴らすイベント「うたう家」が9月28日、「角の家」(金沢市菊川2)で行われた。
夜の文化施設めぐりを楽しむイベント「金沢ナイトミュージアム2025」アートプログラムの一環で、金沢芸術創造財団などが主催。当日は3時間の開催時間中に約30人が予約して訪れ、地域の住民には無料開放した。
会場をセッティングしてパフォーマンスを行ったのは、作曲家でアーティストの足立智美さん。古民家の壁や床、押し入れ、階段など14カ所に、オーディオ・エキサイターと呼ばれる、音を出す振動装置を設置し、自作の制御ソフトウエアを使ってそれぞれの出力や周波数を変化させて家屋を「演奏」した。ガラス窓に取り付けた装置を鳴らすと、まるで雨が降ってきたかのような音に包まれた。周波数によっては電子的な音に感じることもあれば、床に座ると下半身から重低音の振動が伝わることもある。会場では、足立さん本人が声にエフェクトをかけて鳴らすパフォーマンスも行った。
足立さんは「ベルリンでギャラリーの窓を振動させて屋外の観客に向けてパフォーマンスを行った経験を生かした。当時はコロナ禍でギャラリーに観客を入れられなかったので、屋外で音楽を体感する方法を考えた。欧州の建築は石造りなので音が鳴りにくかったが、日本の木造家屋はよく響くので家全体を鳴らすことにした」と話す。「洋室や和室などの部屋を巡っていくことで、部屋の作りや装置の設置場所によってさまざまな音を体感ができるように工夫した」とも。
木造二階建ての「角の家」は住宅が密集する菊川地区にある。かつて製麺所として使われていたという建物の管理は現在、同地区で古民家を活用した事業を推進するNPO法人「綴(つづ)る」が行っている。同NPO代表理事の松本有未さんは「イベントは地域の方にも楽しんでもらっている。準備している時も、何があるのかと興味深そうに声がかかった。この建物は普段ポップアップの店舗として使っているくらいだが、いずれ地域のコミュニティースペースとして整備していきたい」と話す。