「しょうゆの町」として知られる金沢市大野町で4月21日、花嫁道中が行われた。昔ながらの風習にのっとり、自宅で支度を調えた新婦は、家族や友人らに見送られて思い出の詰まった町を後にし、新郎の元へと嫁いだ。
金沢・大野で「花嫁道中」-生家で支度、昔ながらの嫁入り風景再現
この新郎・新婦は、松村7丁目、診療放射線技師齊藤久紘さん(27)と大野町1丁目、会社員濱本祐希さん(27)。近年は、挙式当日に軽装で結婚式場に出向く花嫁が多いが、祐希さんは母親の啓子さん(54)から、自身が嫁いできた時と同じように、娘に自宅で準備をさせて嫁がせることが夢だと聞かされたことから、賛同し、その言葉に従うことにしたという。
この日の午前中、濱本さん方には、祐希さんの友人や、啓子さんと祖母の知人ら約20人が集まり、支度の様子を見守った。ユリを描いた黒の大振り袖に白無垢(むく)を羽織り、桜をデザインした角隠しをかぶる花嫁の姿に、幼いころを知る知人らは「かわいい」と目じりを下げ、成長を実感していた。
和やかな雰囲気の中、祐希さんは父親の茂さん(53)、啓子さんと共に仏壇に手を合わせ、先祖にも結婚を報告。間もなく迎えに来た久紘さんと並んで玄関を出て、これからは「ふるさと」となる大野の町中を歩き、感慨を深めた。
この後、2人は宇多須神社(東山1)で挙式をし、参列者が新しい門出を祝った。
祐希さんは「(友人たちの前で支度をするのは)恥ずかしい気持ちもしたが、お祝いされてすごく幸せ」と声を弾ませ、久紘さんは「新婦の生家、生まれた町でたくさんの方に見ていただけて、やって良かった。ご両親にも喜んでいただいて、それがとてもうれしい」と笑顔を見せた。茂さんは「お嫁に来たときのお母さんに似ているなと思った」と娘の晴れ姿に見入り、啓子さんと、2人の結婚式の日を振り返った。
プロデュースしたブライダル業者「金澤syugen(しゅうげん)」(泉野出町2、TEL 076-214-4555)の担当者は「生まれ育った家でのお支度はここ何十年、なくなってきているが、家や土地にも感謝の気持ちを伝えながらのお嫁入りは、とてもすてきだと思う」と話す。