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能舞版ムソルグスキー「展覧会の絵」初披露-「ラ・フォル・ジュルネ金沢」閉幕

ムソルグスキーの「展覧会の絵」に合わせ、額の中から抜け出た美女を演じる渡邊さん(実行委員会提供)

ムソルグスキーの「展覧会の絵」に合わせ、額の中から抜け出た美女を演じる渡邊さん(実行委員会提供)

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 「ラ・フォル・ジュルネ金沢『熱狂の日』音楽祭2012」が5月5日、閉幕した。期間中は石川県立音楽堂(金沢市昭和町)などを会場に多彩な公演が繰り広げられ、ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」と能舞の協演も行われた。

台北市立交響楽団を指揮し、「悲愴」を披露する西本さん

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 能舞版「展覧会の絵」のステージに立ったのは、金沢市生まれの宝生流シテ方で重要無形文化財に指定されている渡邊荀之助さん。若く妖しいまでの魅力を持つ女性を表す「万媚(まんぴ)」の面、白拍子姿で、絵に描かれた美女が1曲目の「小人」に刺激を受けて生き返り、額縁の中から飛び出して楽しいひとときを過ごし、また絵の中に戻っていくという自ら考えたストーリーを初めて演じた。

 バイオリンとチェロ、ピアノが奏でる旋律に合わせ、能の美女が静かに舞い踊る姿は幻想的で、息をのむような美しさ。日本の古典芸能がクラシックの世界に新たな息吹を吹き込んだ。

 金沢では機会の少ない大編成のオーケストラ5団体による競演も見どころの一つだった。

 指揮者の西本智実さんは台湾の台北市立交響楽団を率い、チャイコフスキーの交響曲第6番ロ短調「悲愴」を披露した。かつてロシアのチャイコフスキー記念財団・ロシア交響楽団の芸術監督兼首席指揮者を務め、未公開の日記を読んだこともあるという西本さんは「人間的にとても優しい人。この曲は最後の作品なので、彼の人生を考えずにはいられない」と、思い入れもひとしお。ステージでは全身を使って情熱的に指揮し、曲に表された感情の爆発とその裏側に秘められた思いを、メリハリを利かせて表現し、会場を埋めた約1700人の心を揺さぶった。

 オーケストラ・アンサンブル金沢音楽監督の井上道義さんはウラル・フィルハーモニー管弦楽団を迎え、念願だったショスタコービッチの楽曲を指揮した。「ものすごく好き。憧れる。あんな生き方、すごいなと思う」とショスタコービッチを尊敬する井上さん。曲目はロシア革命を題材にした交響曲第12番ニ短調「1917年」で、聴衆から「絵を見るようだった」と称賛を受けた。

 実行委員会によると、会期中の来場者数は10万4771人(昨年実績11万8355人)に上った。有料公演は、うち4万2913人(同4万995人)、無料公演は6万1858人(同7万7360人)。JR金沢駅周辺で開催する無料公演の数が減ったことが、来場者数減の原因になったとみている。

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